2007-08-07
中部カリフォルニア冒険の旅(その2)
2007年7月22日(日) 今日はとりたてて予定なし。朝食をロッジのレストランで取り、その後、海に面した裏庭を散策したりしてだらだらすごす。
朝食が多めだったので、昼食は取らずに、家から持って来たメロンと昨日買ったスコーンとお菓子をちょっと持ってドライブ+ハイキングに行く。目指すは、サーモンクリークという場所にあるらしい滝。ロッジから17マイル(27キロ)南の所に入り口のある登山道を1時間ばかりハイキングすればあるらしい。途中途中で見晴し台のような所に車を止めては、海の写真を取りながら車を走らせる。
途中の海の方をみると、海の上に霧が出ていた。普通、霧は、海からの風が山にあたって上昇するところで発生するものだと思っていたので、ちょっとびっくり。ひょっとして、そこは暖流と寒流がぶつかる所か?
この辺のハイウエイ1号線沿いは、ほとんど民家がない。群落のようなもの、途中3つと、キャンプ場があったが、どこもせいぜい人口100人といった感じ。日本人には想像もつかない低人口密度だ。
ロッジを出てから峠をふたつ位過ぎ、17マイルは走ったが、サーモンクリーク山道入り口らしきものはまだ見えず。もうすぐ20マイル地点を過ぎようとしている。不安になって、地図を見るため、道の右側の空き地に車を止める。しかし、ロッジでもらったこの辺の観光案内地図は不正確だし、AAA (アメリカ版JAF。トリプルエイと読む。) の地図にはそんな無名な場所は書いてない。結局よくわからず。もうちょっとだけ行ってみることにして、エンジンかけて車を動かすと、車体の下から、ガタッ、ガタッ、ガタッと、気になる音。まるでパンクしたタイヤで走るような周期の音だが、ちょっと違う。数十メートル先に都合良くまた空き地があったので、そこで車を止め、エンジンを切り、タイヤの確認。でも、どのタイヤもパンクした様子はない。。もう一度エンジンをかけ、ちょっとだけ走ってみるがやっぱり変。今度は道路の反対側にちょっとした駐車場があるのでそこへ車を止める。
何かわかるかもしれないと、タイヤをひとつずつジャッキで上げて調べてみるが、別になに刺さってないしもからまっている様子もない。どうやらもうちょっと込み入った故障らしい。レッカー車を呼ぶしかなさそうだ。だがどうやって?ここは人里離れた山の中の道。携帯も通じなければ、公衆電話もない。それに、この変の地理も不案内で、いったいどこの町なら修理工場があるのかさっぱりわからない。できたらロッジ近く修理工場に移動したいが、こことロッジの間には、小さなガソリンスタンドがひとつあっただけ。修理する設備があるのかどうか実に怪しいし、それに日曜日に開いている可能性はかなり低い。仮に開いていていも5時に閉まるだろうが、今は3時半。レッカー呼んで、引っぱってもらったとして、仮に修理工場が開いていても、修理する時間はないかもしれない。困った困った。
と困りながらまわりを見渡したところ、何かの看板が。行ってみると、ここが目的地のサーモンクリーク登山道入り口であった!何たる皮肉。今は車を何とか直すことと、宿に戻ることが最優先。ハイキングはあきらめざるを得ない。
取りあえずこの辺の地理や交通事情を知っておいたほうがいいかと、駐車場(といっても車7台ぐらいしか入らない、空き地のようなところ)に今駐車したばかりの車が目にはいったので、その車のドライバーと話してみた。車にいたのは、50〜60歳ぐらいの夫婦と犬2匹。夫のフランクは体の大きないかにもアメリカ人。だが、とても親切な上に、都合よく車の修理工をやっていたことがあるらしい。まず、ちょっと車を動かしてみて、それから何と、汚れるのもいとわず車の下に大きな体を入れて、見てくれた。彼の診断は、ドライブシャフトかその周辺の問題で、このまま走行はしないほうがいい、とのもの。フランクは違う携帯会社の携帯を持っていたので、試してみたが、やはり圏外。奥さん(名前聞き忘れ)が出て来て、じゃあ、オレを乗せて携帯が使えるところまで運んでやろうか、とのこと。ありがたい申し出に感謝。ただし、奥さんを犬の散歩ができるところまで車で運んで降ろして来るから待っててくれということ。しかし車はすぐに戻って来た。何と50m ぐらい離れたところに、非常電話があるとのこと。これは、どうもありがとう、と礼をいい非常電話の所へ行く。
これで助かった。非常電話の受話器を取り、呼び出しボタンを押すと、係員が出た。非常電話の番号を読み、車が故障したことを伝え、AAA につなげてくれるように頼む。だが、素直に AAA に伝えてくれるわけではなかった。オレの名前、(使えない)電話番号、車の種類、詳しい場所を聞きとった上で、ちょっと待っててくれと言われた。が、なかなか戻って来ない。5分ぐらいして、つながったかと思ったら、また同じような質問。おい、大丈夫かこいつ?さらに待つこと10分。風は吹いているが、一応炎天下。結構暑い。受話器の長さの関係で、座り込むこともできず、立ちっぱなし。結構つらい。やっと AAA に繋がった。が、話が通じない。非常電話の番号を読むように言われて読んだが、向うが思っているのとは番号の体系が違うようで、相手はオレの場所を正確につかんでいない様子。辛抱強く話を続けたあげく、「じゃあ、サーモンクリークからレッカー車が行きますから、待っててください。」という。えっ?「あの、すいません、サーモンクリークからレッカー車って今言いました?あの、今我々がいるのは、サーモンクリーク登山道入り口なんですけど、わかってます?サーモンクリークというのはこの登山道だけで、レッカー移動の会社があるような場所じゃないんですけど、我々の場所、正確に把握されてますか?」、とオレ。「えーっと、メンダシーノの近くですよね?」おいおい。メンダシーノというのは、サンフランシスコから北へ3時間ぐらい北上した所にある沿岸の町だ。確かに1号線沿いではあるが。「違います、違います、今いるのは、モントレーの南にあるビックサーのさらに南です。近くの大きな町は、サンルイオビスポ」「えっ、それなら、うちの管轄じゃないなぁ。今話しているのは、AAA の北カリフォルニア支部で、おたくは南カリフォルニア支部と話す必要あるよ。」
ガーン。後でわかったのだが、故障した場所は、ちょうどAAAの支部境界の近くで、非常電話の受付センターは、北カリフォルニア支部管轄地域にあるようだ。境界の近くに住んでいる人は、皆迷惑を受けているらしい。
こんなことしている間に、さっきのフランク奥さんが、まだ電話をしているオレを見つけて、心配になってやってきた。冷たい水のボトルと何かの食料を持ってきてくれた。何と親切な。まったく感激。でも水筒は持っていたので、お礼だけ行って丁寧にお断りした。
思い直してもう一度非常電話に挑戦。今度は担当者が出るまで時間がかかる。さっきとは違う人が出た。同じ情報を伝えた上で、今度は南カリフォルニアの AAA につなげてもらうよう頼む。ここでまた待ち状態にされて、待つこと10〜15分。やっと南カリフォルニアAAAの人が出る。同じこと情報を繰り返して伝える。南カリフォルニアAAAだから大丈夫かと思ったが、やっぱり非常電話の場所の確認ができない。いったい何のための非常電話だ。あれこれ話をしているうちに、何と、途中で通話が切れる!
もう、いやー。泣きそうだ。あれこれあってもう45分は電話かけてるぞ。こんなの続けていたら、今に暑くて倒れるかも。何でこんな目にあわんといかんのだ!ああ、こんなところで遭難するんだろうか?と、怒りと悲しみと悲壮感が混じった気持ち。
しかし、もう一度気を取り直して、非常電話に挑戦。今度は、今まで起きたことを説明した上で、ここは暑くて、オレはもう疲れていて、こんなこと続けていたらいつ倒れるかもしれん、と言った。すると、非常電話担当者は何と AAA ではなく、ハイウェイパトロール(ハイウェイを管轄する州警察)につなげてしまった。いきなり、名前を名乗れ、といかにも警察的高圧的態度。一瞬ビビったが、助けがいること、疲れていはいるが救急車は不要で、ただ AAA に来てほしいことを伝え、相手がここの場所を正確に把握していることを確認した。担当の人(警官かも)は、AAA に連絡するから、そこで待て、という。45分ぐらいで来れるだろうと。
半信半疑だが、こうなったら、警官の言ったことを信用するしか無い。フランク達は、もしレッカー車が来なかったら大変だから、いっしょにしばらく待ってくれるという。本当に親切な人達だ。もう一度犬を近くの沢に散歩に連れて行き、帰って来てもレッカー車が来てなかったら、オレ達を近くの町まで連れて行ってくれることになった。
オレ達はいつレッカー車が来てもいいように、駐車場で待つ。だがちっともこない。45分経過。でもだめだ。しかしフランク達も戻って来ないので、駐車場の陰に座って待つ。オレの車と同じ車種の車にハイキングを終えたレズのカップル(たぶん)が戻って来たので、同車種のよしみということで、ちょっと話をした。そしたら、その二人もオレ達のことを心配して、水とナッツを置いて行ってくれた。まったく、ありがたい人達ばかりだ。
ということをしているうちに、黒いバイクが一台南からやって来て、止まる。イージーライダーといった感じのバイク。後ろに寝袋を積んでいる。運転手は結構なおじさん。タバコに火をつけながら、突然オレに話しかけて来た。「いやー、今日は気違いみたいな速さでこの山道を行くバイクが多いだろ。昨日、モントレーの近くでバイクの大きなレースがあって、いろんなところからバイク野郎が集まっていたんだよ。そいつらが、一拍してから、わざわざ1号線使って帰るんだけど、あいつらものごとわかってないよね。こんな速さで走ったら危ないよ。」みたいな話だ。そういや、確かに、オレ達の車も暴走気味のバイクの集団に途中で何回か抜かれた。追い越し禁止の所でも平気で追い越ししてくるし、危ないなと思っていた。
あたりさわりのない話をした後、オレ達が何故ここでつっ立って待っているのかを説明したら、とても同情してくれて、「じゃあ、オレもいっしょに待ってやるよ。急ぐ旅じゃないからね。」とありがたいお言葉。これで、応援団3人目だ。このおじさん、既婚者だが、時々ぶらっと寝袋とテント持ってバイクで旅をするのだそうだ。時々お尻が痛くなると、こうやって休憩するのだそうだ。

バイクのおじさんといっしょにガードレールに腰をかけて話を続ける。おじさんは、まだ暴走バイクを心配していて、「いやあ、こんなことしていたら、事故起きるよね。オレは、もし倒れたバイクが出たら、起こすのを手伝ってやることにしよう。」と言う。ちなみに、我々の目の前は、右側(北)からの下り坂が終わって、また登り坂が始まるところで、やや急で見通しの悪いカーブとなっている。
しばらくすると、山のほうから人影がやってくる。どうやらフランクと奥さんと犬と、あと一組犬連れのハイカー達だ。こちらに向かってくる。やれやれ、やっぱり、レッカー車は来なかった。オレの車は今晩はここに置いて、フランクの車で近くの町に行くしかないようだ。ロッジには多分戻れないだろう。一泊分無駄にすることになるな。などと考える。まだ彼らが登山口に着くには数分かかりそうなので、また、道路を何気なくながめる。
その時、我々の右手からやってきたバイクが右カーブを曲がりきれなかったのか、センターラインをオーバーして左のレーンにはみ出て来た(アメリカは右側通行)。左からは割とベンツがゆっくりめにやって来る。バイクは、車のボンネットの上に跳ね上がり、バイクの運転手はそのまま空中を飛んで、車の後方に落ちた。あっという間の出来事だ。信じられない。たった今、我々の目の前で、衝突事故が起きたのだ。
(まだつづく)
朝食が多めだったので、昼食は取らずに、家から持って来たメロンと昨日買ったスコーンとお菓子をちょっと持ってドライブ+ハイキングに行く。目指すは、サーモンクリークという場所にあるらしい滝。ロッジから17マイル(27キロ)南の所に入り口のある登山道を1時間ばかりハイキングすればあるらしい。途中途中で見晴し台のような所に車を止めては、海の写真を取りながら車を走らせる。

この辺のハイウエイ1号線沿いは、ほとんど民家がない。群落のようなもの、途中3つと、キャンプ場があったが、どこもせいぜい人口100人といった感じ。日本人には想像もつかない低人口密度だ。
ロッジを出てから峠をふたつ位過ぎ、17マイルは走ったが、サーモンクリーク山道入り口らしきものはまだ見えず。もうすぐ20マイル地点を過ぎようとしている。不安になって、地図を見るため、道の右側の空き地に車を止める。しかし、ロッジでもらったこの辺の観光案内地図は不正確だし、AAA (アメリカ版JAF。トリプルエイと読む。) の地図にはそんな無名な場所は書いてない。結局よくわからず。もうちょっとだけ行ってみることにして、エンジンかけて車を動かすと、車体の下から、ガタッ、ガタッ、ガタッと、気になる音。まるでパンクしたタイヤで走るような周期の音だが、ちょっと違う。数十メートル先に都合良くまた空き地があったので、そこで車を止め、エンジンを切り、タイヤの確認。でも、どのタイヤもパンクした様子はない。。もう一度エンジンをかけ、ちょっとだけ走ってみるがやっぱり変。今度は道路の反対側にちょっとした駐車場があるのでそこへ車を止める。
何かわかるかもしれないと、タイヤをひとつずつジャッキで上げて調べてみるが、別になに刺さってないしもからまっている様子もない。どうやらもうちょっと込み入った故障らしい。レッカー車を呼ぶしかなさそうだ。だがどうやって?ここは人里離れた山の中の道。携帯も通じなければ、公衆電話もない。それに、この変の地理も不案内で、いったいどこの町なら修理工場があるのかさっぱりわからない。できたらロッジ近く修理工場に移動したいが、こことロッジの間には、小さなガソリンスタンドがひとつあっただけ。修理する設備があるのかどうか実に怪しいし、それに日曜日に開いている可能性はかなり低い。仮に開いていていも5時に閉まるだろうが、今は3時半。レッカー呼んで、引っぱってもらったとして、仮に修理工場が開いていても、修理する時間はないかもしれない。困った困った。

取りあえずこの辺の地理や交通事情を知っておいたほうがいいかと、駐車場(といっても車7台ぐらいしか入らない、空き地のようなところ)に今駐車したばかりの車が目にはいったので、その車のドライバーと話してみた。車にいたのは、50〜60歳ぐらいの夫婦と犬2匹。夫のフランクは体の大きないかにもアメリカ人。だが、とても親切な上に、都合よく車の修理工をやっていたことがあるらしい。まず、ちょっと車を動かしてみて、それから何と、汚れるのもいとわず車の下に大きな体を入れて、見てくれた。彼の診断は、ドライブシャフトかその周辺の問題で、このまま走行はしないほうがいい、とのもの。フランクは違う携帯会社の携帯を持っていたので、試してみたが、やはり圏外。奥さん(名前聞き忘れ)が出て来て、じゃあ、オレを乗せて携帯が使えるところまで運んでやろうか、とのこと。ありがたい申し出に感謝。ただし、奥さんを犬の散歩ができるところまで車で運んで降ろして来るから待っててくれということ。しかし車はすぐに戻って来た。何と50m ぐらい離れたところに、非常電話があるとのこと。これは、どうもありがとう、と礼をいい非常電話の所へ行く。
これで助かった。非常電話の受話器を取り、呼び出しボタンを押すと、係員が出た。非常電話の番号を読み、車が故障したことを伝え、AAA につなげてくれるように頼む。だが、素直に AAA に伝えてくれるわけではなかった。オレの名前、(使えない)電話番号、車の種類、詳しい場所を聞きとった上で、ちょっと待っててくれと言われた。が、なかなか戻って来ない。5分ぐらいして、つながったかと思ったら、また同じような質問。おい、大丈夫かこいつ?さらに待つこと10分。風は吹いているが、一応炎天下。結構暑い。受話器の長さの関係で、座り込むこともできず、立ちっぱなし。結構つらい。やっと AAA に繋がった。が、話が通じない。非常電話の番号を読むように言われて読んだが、向うが思っているのとは番号の体系が違うようで、相手はオレの場所を正確につかんでいない様子。辛抱強く話を続けたあげく、「じゃあ、サーモンクリークからレッカー車が行きますから、待っててください。」という。えっ?「あの、すいません、サーモンクリークからレッカー車って今言いました?あの、今我々がいるのは、サーモンクリーク登山道入り口なんですけど、わかってます?サーモンクリークというのはこの登山道だけで、レッカー移動の会社があるような場所じゃないんですけど、我々の場所、正確に把握されてますか?」、とオレ。「えーっと、メンダシーノの近くですよね?」おいおい。メンダシーノというのは、サンフランシスコから北へ3時間ぐらい北上した所にある沿岸の町だ。確かに1号線沿いではあるが。「違います、違います、今いるのは、モントレーの南にあるビックサーのさらに南です。近くの大きな町は、サンルイオビスポ」「えっ、それなら、うちの管轄じゃないなぁ。今話しているのは、AAA の北カリフォルニア支部で、おたくは南カリフォルニア支部と話す必要あるよ。」
ガーン。後でわかったのだが、故障した場所は、ちょうどAAAの支部境界の近くで、非常電話の受付センターは、北カリフォルニア支部管轄地域にあるようだ。境界の近くに住んでいる人は、皆迷惑を受けているらしい。
こんなことしている間に、さっきのフランク奥さんが、まだ電話をしているオレを見つけて、心配になってやってきた。冷たい水のボトルと何かの食料を持ってきてくれた。何と親切な。まったく感激。でも水筒は持っていたので、お礼だけ行って丁寧にお断りした。
思い直してもう一度非常電話に挑戦。今度は担当者が出るまで時間がかかる。さっきとは違う人が出た。同じ情報を伝えた上で、今度は南カリフォルニアの AAA につなげてもらうよう頼む。ここでまた待ち状態にされて、待つこと10〜15分。やっと南カリフォルニアAAAの人が出る。同じこと情報を繰り返して伝える。南カリフォルニアAAAだから大丈夫かと思ったが、やっぱり非常電話の場所の確認ができない。いったい何のための非常電話だ。あれこれ話をしているうちに、何と、途中で通話が切れる!
もう、いやー。泣きそうだ。あれこれあってもう45分は電話かけてるぞ。こんなの続けていたら、今に暑くて倒れるかも。何でこんな目にあわんといかんのだ!ああ、こんなところで遭難するんだろうか?と、怒りと悲しみと悲壮感が混じった気持ち。
しかし、もう一度気を取り直して、非常電話に挑戦。今度は、今まで起きたことを説明した上で、ここは暑くて、オレはもう疲れていて、こんなこと続けていたらいつ倒れるかもしれん、と言った。すると、非常電話担当者は何と AAA ではなく、ハイウェイパトロール(ハイウェイを管轄する州警察)につなげてしまった。いきなり、名前を名乗れ、といかにも警察的高圧的態度。一瞬ビビったが、助けがいること、疲れていはいるが救急車は不要で、ただ AAA に来てほしいことを伝え、相手がここの場所を正確に把握していることを確認した。担当の人(警官かも)は、AAA に連絡するから、そこで待て、という。45分ぐらいで来れるだろうと。
半信半疑だが、こうなったら、警官の言ったことを信用するしか無い。フランク達は、もしレッカー車が来なかったら大変だから、いっしょにしばらく待ってくれるという。本当に親切な人達だ。もう一度犬を近くの沢に散歩に連れて行き、帰って来てもレッカー車が来てなかったら、オレ達を近くの町まで連れて行ってくれることになった。
オレ達はいつレッカー車が来てもいいように、駐車場で待つ。だがちっともこない。45分経過。でもだめだ。しかしフランク達も戻って来ないので、駐車場の陰に座って待つ。オレの車と同じ車種の車にハイキングを終えたレズのカップル(たぶん)が戻って来たので、同車種のよしみということで、ちょっと話をした。そしたら、その二人もオレ達のことを心配して、水とナッツを置いて行ってくれた。まったく、ありがたい人達ばかりだ。
ということをしているうちに、黒いバイクが一台南からやって来て、止まる。イージーライダーといった感じのバイク。後ろに寝袋を積んでいる。運転手は結構なおじさん。タバコに火をつけながら、突然オレに話しかけて来た。「いやー、今日は気違いみたいな速さでこの山道を行くバイクが多いだろ。昨日、モントレーの近くでバイクの大きなレースがあって、いろんなところからバイク野郎が集まっていたんだよ。そいつらが、一拍してから、わざわざ1号線使って帰るんだけど、あいつらものごとわかってないよね。こんな速さで走ったら危ないよ。」みたいな話だ。そういや、確かに、オレ達の車も暴走気味のバイクの集団に途中で何回か抜かれた。追い越し禁止の所でも平気で追い越ししてくるし、危ないなと思っていた。
あたりさわりのない話をした後、オレ達が何故ここでつっ立って待っているのかを説明したら、とても同情してくれて、「じゃあ、オレもいっしょに待ってやるよ。急ぐ旅じゃないからね。」とありがたいお言葉。これで、応援団3人目だ。このおじさん、既婚者だが、時々ぶらっと寝袋とテント持ってバイクで旅をするのだそうだ。時々お尻が痛くなると、こうやって休憩するのだそうだ。

バイクのおじさんといっしょにガードレールに腰をかけて話を続ける。おじさんは、まだ暴走バイクを心配していて、「いやあ、こんなことしていたら、事故起きるよね。オレは、もし倒れたバイクが出たら、起こすのを手伝ってやることにしよう。」と言う。ちなみに、我々の目の前は、右側(北)からの下り坂が終わって、また登り坂が始まるところで、やや急で見通しの悪いカーブとなっている。
しばらくすると、山のほうから人影がやってくる。どうやらフランクと奥さんと犬と、あと一組犬連れのハイカー達だ。こちらに向かってくる。やれやれ、やっぱり、レッカー車は来なかった。オレの車は今晩はここに置いて、フランクの車で近くの町に行くしかないようだ。ロッジには多分戻れないだろう。一泊分無駄にすることになるな。などと考える。まだ彼らが登山口に着くには数分かかりそうなので、また、道路を何気なくながめる。
その時、我々の右手からやってきたバイクが右カーブを曲がりきれなかったのか、センターラインをオーバーして左のレーンにはみ出て来た(アメリカは右側通行)。左からは割とベンツがゆっくりめにやって来る。バイクは、車のボンネットの上に跳ね上がり、バイクの運転手はそのまま空中を飛んで、車の後方に落ちた。あっという間の出来事だ。信じられない。たった今、我々の目の前で、衝突事故が起きたのだ。
(まだつづく)