2007-07-30

中部カリフォルニア冒険の旅(その1)

2007年7月21日(土) 2泊3日の予定で連れ合いと週末の小旅行に出かけた。場所は、サンフランシスコから南へ180キロほど南下したところにある水族館とジャズフェスティバルで有名なモントレーからさらに数十キロ先から延々と続く、太平洋に面したビッグサーと呼ばれる海岸地帯だ。片道1レーンのハイウエイ1号線が海岸沿いのくねくね道を行く。人はほとんど住んでいない。海と山の風景を見て、温泉に入ってのんびり過ごす予定であった。ところがそれは、意に反してちょっとした冒険の旅となってしまった。その顛末を何回かに分けて書く。


土曜日朝10時半頃サンフランシスコを出発。目指すは、エサレン研修所(よく「エサレン研究所」と訳されているが、研究はしていないので、こう訳す。)。本当はここで2泊したかったのだが、満室で予約できなかったので、土曜と月曜にマッサージを受けることにした。ここは、一般客の入浴は夜中の1時から3時までしか認めておらず、宿泊せずにまともな時間帯に温泉に入るには、マッサージの予約をするしかないのだ。途中でカーメルの町でお茶を飲んだ以外は、寄り道せずに走り続ける。ビッグサーの集落を抜けると、道路の右側は海と岩と波、左側は山という景色がずっと続く。そのうち右側にエサレン研修所の「予約客のみ」と書かれた看板が見える。マッサージの予約の時刻までまだ時間があるので、エサレンは通り過ぎて、まず宿へ行く。

宿はエサレンをちょっと過ぎたルシアという場所にあるルシアロッジ。ルシアというところは初めてだ。ビッグサー近くまで来ると、道路の距離標識にちゃんと、ルシアまで何マイル、とあるので、ちょっとした町を想像して行く。エサレンを過ぎて17マイル(約25キロ)の所に、ルシアの境界の看板を発見。そしてすぐにロッジとコンビニとレストランがあった。3時半。家を出発してから5時間。

でも、他に何も無い。ルシアの町の繁華街はどのくらい先か、とチェックインをする売店の人にたずねると、ルシアはこのロッジだけだという。何とこのロッジのためだけに集落名がついていて、道路標識にも出ているのだ。そんなのありか?ちなみにこの後ハイウェイ1号線を南下していると、人口16人の村というのにもでくわした。どうもこのへんは、そういう小集落が点在しているらしい。

部屋の鍵をもらい、部屋に入り、ちょっとだけ休んだら、エサレンへ出発。マッサージの予約は5時半からだが、その1時間前から入場ができ、入浴ができるため、4時半には入場したいのだ。予定より10分早く4時20分に入場口に着いてしまったが、別に何も言われることなく、入場。駐車して、庭をちょっと散策して、それから風呂へ。ここの風呂は、海に面したコンクリートの建物で、屋外に浴槽が2つ、半屋外に2つ、屋内に2つ、と並んでいる。混浴である。ここの何がいいかというと、岩にあたって砕け散る力強い太平洋の波の音を聞きながら、温泉に入れるということだ。(夜なら、これに月夜とろうそくの照明付きで、さらにいいのだが、今回はそれはなし。)
予約の時刻になったら担当のマッサージ師が呼びに来ていることになっていたのだが、オレの担当者はさっぱり来ない。連れ合いの担当の人はもう10分前位に来たというのに。しかたないので、その辺の職員風の人に聞くと、担当者を探してくれた。何だか年齢がいってそうな人。大丈夫か?と思うが、今さらどうしようもない。自己紹介をして名前は言ったが、基本的に無口な人だ。ガラス戸ごしに海の見えるマッサージ室へ案内され、マッサージ台に寝る。最初は指圧っぽいことをしたが、一発でツボに入る。やさしいが、確実。迷いが無い。あれ、この人結構すごいじゃん。(後でにわかったのだが、エサレン創設時のメンバーで今も現役でマッサージをしている二人のうちの一人だった。すごいはずだ。)それですっかり気持ちよくなり、オレは途中かなり寝たらしい。あっというまに75分経過。また風呂にちょっと浸かってから、マッサージ室を出る。ちょっと構内を散歩してから、ルシアロッジに戻る。

夕食をルシアロッジのレストランで食べ、部屋でちょっとワインを飲んでから寝る。ここまでは、順調。明日以降どういう冒険が始まるのか、オレ達はまだ知らない。
(つづく)

2007-07-05

顔が覚えられないのは病気のせいだった

アメリカ人は、挨拶する時に名前を呼ぶ。Good morning!ではなく、Good morning, John! みたいに。これがオレにはできない。オレは人の顔を覚えるのが苦手で、おまけに顔を認識できる人でも名前がすぐに出て来ない。やっと思い出した頃には、すでにすれ違った後、ということになる。だから、パーティーとか苦手で、なかなか友人ができない。


ま、こういうのは、仕方ないか、あきらめていたら、今日(7月5日)のヲールストリートジャーナル紙の一面に気になる記事が載っていた。ちなみに、ヲールストリートジャーナルは、一般紙は絶対に一面に持って来ない、どうでもいいけど知的好奇心に訴える記事を一面に出す変な新聞だ。この記事は、オンラインでここでも読めるが、紙媒体の購読者でない人はお金払っての会員になる必要あり。


この記事によると、顔を認識できない人達というのは結構いて、その性質は遺伝するらしい。そして、その程度もまちまちだそうだ。重症の人は、親の顔を認識できない。この症状を持つ子供を学校に迎えに行くと、子供は親に向かって、「僕のお母さんですか?」と聞くんだそうな。。知り合いに名前を呼ばれても、「あれ、この人、何で僕の名前知ってるの?」と思うのだそうだ。ある親子は二人とも重症で、学校の親子の参加する行事に出た時、お互いを見つけることができず、警察に手伝ってもらったそうだ。こういうのを見ると、オレの症状なんてかわいいもんだ。


この症状には、prosopagnosia という、立派な名前がついている。(顔不認識という意味のギリシャ語らしい。)が、一般には、faceblind つまり、顔盲、と言われる。こうなると、オレは、もう顔を覚えられないことを恥じる必要はない。堂々と、「オレ、顔盲なんで、ひとつよろしく。」と言っときゃいいのだ。病気なのだからしかたない。症状に名前があるということは、いいことだ。


しかし、オレの症状はどこまでひどいか気になったので、オンラインの方の記事にあった顔盲のテストというのをやってみた。結果は、


うむ、やはり、気のせいではなく、本当に顔を覚えられないことが確認された。それも100人中100位。これで、オレも、立派なビョーキである。


さて、このテストは、オンランで、誰でも受けることができます。ヒマな人は挑戦して、結果をコメントに書くよーに。URL は、http://www.icn.ucl.ac.uk/facetests/ である。なお、このテストの開発者も認めているが、テストで使われる顔は皆白人の顔なので、白人の顔を見慣れていない人には不利な結果が出ることになっている。でも、オレの場合、多分日本人の顔でやっても結果に大差はないだろう。

2007-07-03

イギリスの医療保険制度に驚く

毎度社会問題を痛烈に批判するマイケル・ムーア監督の新作映画「シッコ」。今回は、先進国の中でも最低の国民医療保険制度を持つ、・・・というか、持たない、アメリカ社会の実態を突く。シッコ(SiCKO) は、日本語のおしっこのことではなく、精神的または道徳的に病的(sick)な人、だそうだ。きっと日本語的には、カタカナで、ビョーキ、って感じ?


全くアメリカの医療制度はサイテーである。国や州政府の管理する健康保険制度はあることはあるのだが、これが適用されるのは、老人と、児童と、低所得者だけである。(低所得者と言っても、こんな所得ではとてもじゃないがサンフランシスコでは食っていけない、という所得制限なので、この辺ではほとんど役に立たない。)まともな中小企業は、福利厚生の一環として従業員に医療保険を提供するので、ほとんどの人は、この保健制度を使う。問題は、小企業や零細企業に勤める人、自営業の人、そして失業者だ。この人達は、自分で民間の保険会社の売る医療保険に入るしかないのだが、この保険料がここ10年ほどの間にどんどん上がって、いろいろな制限付きの保険でも家族で毎月600ドル(7万2000円)とか払わないといけない。自営業の一部の人には問題ないがそれ以外の人にはとても払える額ではない。結果、多くの国民が医療保険なし、という状態になっている。こういう人達は、法律により支払い能力がなくても治療をすることが義務づけられている救急病院に行くしかなくなり、救急病院は何時間待ち、という状態になったりして、社会問題化しているというわけだ。


これに比べると、日本は超先進国である。国民皆保険で、保険料も収入に応じてなので、ちゃんと払える。病院に受診しても自己負担は薬込みで1000円位。入院しても一日1万円前後。(アメリカでは、全額自己負担だと1日100万円弱!)これなら安心して病院に行ける。(これはどうかと思うが)救急車はタダだしね。と思ったら上には上がいた。


映画は見ていないが、監督へのインタビューのポッドキャストを聞いた。この中で、イギリスの病院の紹介があった。イギリスでは、病院は国が運営し、医者は公務員だそうだ。受診料は、・・・タダ!出産もタダだからきっと手術もタダなんだろう。まあ、この辺は、昔社会の教科書でイギリスは、「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家と習ったので、驚かない。ムーア監督が病院の人に聞く。「医療費タダなんだったら、そこにある会計窓口は何のためにあるんですか?」答えは、交通費の払い戻しをするため、だって。何と病院が患者にお金を払うのだ。えー、ここまでやるか!確かイギリスの福祉制度は度を超しているというので、サッチャー首相が大鉈をふるって削減したはずだが、削減してもこんなにすごいのか?ただただ、あきれてしまった。


ちなみにこの番組の podcast は、ここから見れます。(ビデオでも見れるらしい。):

http://www.pbs.org/now/shows/326/index.html

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