2011-06-10

クラウドとクラウド

アップル社が iCloud なるものを発表した。何だかよくわからないが、とりあえず流行語のクラウドに、i をつけておけというまったく安易なネーミングには、脱帽だ。ここまで行くと、潔い。

このクラウド、オレの記憶では、業界ではもう10年近く使われている言葉だが、今だに意味不明である。使う人(会社)ごとに、勝手な意味付けをして使っている。まったく、流行語であることが唯一の意味、みたいな言葉である。インターネットや、社内 LAN が、あって、それの上にデータが、何となく分散して置かれていれさえすればクラウドと呼んでいい、みたいなイメージだが、それすらあやしい。どの会社も、「我が社はクラウドを実践してます」と言っているが、それが具体的に何なのかは、よくわからない。まったく「雲もつかめないような話」。おお、だから、cloud = 雲なのか。と、自分で納得しておこう。

さて、この、iCloud のクラウド以外に、同じコンピューター業界だが、ちょっと傍流の分野で何となく流行の言葉が、クラウド・ソーシング=crowd sourcing。crowd=大衆を起源とせよ、という意味だが、要は、一人あるいは組織が何かを作り上げるのではなく、一般大衆にまかせてしまおうという技法である。有名なのが、wikipedia。一般利用者の知識を集めて、大百科事典を作ってしまったのは、ご存知の通りだ。また、facebook の諸言語対応化(ローカリゼーションと呼ぶ)においては、ローカリゼーション専門家も企業も雇わず、利用者に翻訳をさせた。ある種の人気投票システムを作って、皆が納得するいい訳語を選んでいった。これも、クラウド・ソーシングの一形態である。 

もうおわかりだろうが、このように、カタカナにすると同じになってしまう二つの言葉が同時に流行中で、しかも両方ともちゃんとした日本語訳がなくて、カタカナで音訳するため、クラウド、と言われた時に、どっちの英語を指しているのかわからない、という、困ったことになってきているわけだ。

オレの専門としている、あるコンピューター技術の分野では、 shingle という言葉が悩みの種である。この技術を日本人に教える時、「シングルは〜」と言うわけだが、これでは、独身のシングル=single と全く区別がつかない。ちなみに、元々の意味は、屋根の板のことらしい。困ったものだ。

This page is powered by Blogger. Isn't yours?