2008-06-06

カリフォルニアの公教育を嘆く

オレがアメリカに引っ越した理由の一つは教育。日本のような、軍隊式、集団重視、減点主義、詰め込み教育ではなく、自由を尊重した、個性重視の、ほめて延ばす教育が受けられると思っていた。が、はっきり言って幻滅してた。

自由尊重、個性重視、よくほめる、の部分は割と期待通りだった。

英語の教育は、発表や創作を重視して、これはとてもいいと思う。数学もまあまあ。

しかし、科学はひどい。分厚い教科書を読んでいくだけで、実験がほとんどない。小学校の教科書には、すでに元素やら分子やら原子やらと言った言葉が羅列して書いてある。が、事実として説明してあるだけで、どういう経過でそういうものが見つかったとか、そう考えると何が都合がいいのか、どういう実験がそれを裏付けているのかとかいった科学的な考え方の説明に乏しい。ただ、言葉を無意味に覚えるだけだ。こんなの科学じゃない。まさに、詰め込み教育の典型である。

この詰め込み教育の元凶は、恐らく、「No child left behind」(落ちこぼれゼロ) と名づけれた連邦法である。この連邦法、学校間格差をなくす、学習到達度の人種による違いを是正する、といった目的はいいのだが、方法が間違っている。学校がちゃんと教育を行っているかどうかの尺度を、統一テストの結果に頼っていて、目標を到達しなかった学校や教育委員会は予算削減という罰が待っている。なので、学校としては統一テストの平均点を上げることに必死で、結果として詰め込み主義、テスト偏重主義の走る、というわけだ。

しかしこんなことしていては、科学嫌いの子供を大量生産するだけか。これではますますインドや中国から大量にエンジニアの移民を受け入れざるを得なくなるぞ。

体育、音楽、美術に関していうと、全くお寒いの一言。なんと小学校には、こういう周辺科目に対して予算がついてない!PTA みたいな組織が中心になって親から寄付を集めて材料を買い、先生を雇うというとんでもない状況である。中学校になると、ちゃんと予算がついて、やっと教育が受けられるようになる。と喜んでいたが、息子の話によると、体育の実態は、遊びの時間らしい。球技のルールとやテクニックを教えたりはしてくれないらしい。どういう体育じゃ?(ちなみに、ちゃんと体育に予算がつく州もある。)

カリフォルニアの公教育の問題点の元凶は、しかし、予算がつかない、ということにつきる。カリフォルは、アメリカの州の中で一番人口が多く、ちょっとした国に匹敵する財政基盤を持った豊かな州である。にもかかわらず、教育に対する予算配分は、かなり少ない。The Ins and Outs of School Finance (学校予算のすべて)という記事にある地図によると、カリフォルニアの初等教育(高校まで)の生徒一人当たりの予算は、$7905 とある。政府機関のサイトにあったこの表は、もっと詳しく、資産などを除いた 2003-2004 年度の生徒一人当たりの費用は、$7673 とある。50州の中で下から24位だから、そんなに悲観することない、と思うかもしれないが、1位のバーモンド州の$11211に比べるといかに低いかがわかる。ちなみに、集計方法などが多分違うので一概には比較できないとは思うが、この記事によると、東京都は一人あたりだいたい100万円(≒$9500)近く使っていることになるから、カリフォルニアは、東京都以下だ。

それに輪をかけて困るのが、今年度の税収不足。カリフォルニアの州知事、つまりシュワちゃんは、来年度(7月から)の州予算を削減するにあたって、こともあろうに教育予算を狙っていて、10%削減を公言しているのだ。きっと、シュワちゃんの属する共和党は、お金持ちが多くて、子供を私立に入れるので、公教育予算を削られても痛くも痒くもないのだろう。教員団体は、民主党支持者が多いことも関係しているかもしれない。もし10%の削減を強行したら、カリフォルニアの製と一人当たりの教育予算は、50州中下から10位ぐらいに転落するはずである。とんでもない話である。

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